無題からはじまった。

不思議な気持
三年前こんなに音楽を楽しんでいる
今の自分を想像する事はできなかった。

あの時「一度だけやってみよう」の
つもりだったのは歌う自信がなかったから
それでも回を重ねていくうちに
昔の事が蘇り「あ,これって?」という感じが
身体の中を駆け巡るのがわかる様になっていく。
それにしたって着いて行くのがやっとな私を
二人は優しく見守り自分で答えをみつけなさいと
さりげない一言を繰り返しながら導いてくれている。

リハーサルでは,二人の次元の高い音楽表現が
うまく交わり,個々に歌っていた曲も
新しくドレスアップをして出来上がる。
それぞれの思いを大切にしてくれる事で
六文銭独特のハーモニーが誕生する。
その時の楽しさは格別で
グループで歌う喜びと
尊敬する二人の作家と 音楽を供にする幸せを
噛み締める瞬間でもある。

音楽から離れた所に居た私は
丸や三角や点点で空白を埋めながら
日々を重ねてきた。
娘も嫁ぎ息子も自立する年頃になり
私の役割も終わりに近付いている。
親としての思いは変わらないが
とうに私の羽根の下から飛び立っていて
向き合う事もなくなりつつある。

そんな時に再び音楽と巡り合えた事
たくさんの方が創ってくれたこの機会は
生きる喜びに繋がり
これからの私の人生にもうひと色
鮮やかな色をつけてくれそうだ。
自分が描くイメージに
中々近付けないでいる私の力量を
恨めしく思うばかりではあるが
それと闘うこともまた「楽し!」
等と考えていたら
私のもう一度の人生は
「無題からはじまった」のかなあって。