2005年08月一覧

ぼくの夏休み

夏の終わりに
ひさしぶりの及川恒平氏ソロライブに行ってきた。
「ぼくの夏休み」というタイトルは何故か幼いころの
そう、小学生のころの夏休みをイメージしてしまう。
テレビのニュースなどで見かける
海外で過ごす家族の夏休みではなく
従兄弟と駆けまわった山、川、蝉の声、麦わら帽子
開けはなった窓、日よけの葦簀、
ときおり吹きぬける心地よい風
座敷の座卓いっぱいに広げた宿題‥
隣にいる父の姿、大きな丸いスイカ
決しておとなの夏休みじゃないのは何故だろう。

7時15分開演と聞いていたが少し早く始まる。
マイクがたった一本中央に立っていた。
ギターマイクなし。
恒平氏のお話の中にも出てきたが
六文銭当時はマイク一本で二人や三人ほっぺをくっつけるように歌うことは特別なことではなかった。
だからギターの音も歌声も
モニターがなくても聞こえてくる。
しかし性能はくらべものにならない。
マイクから30センチ
いや50センチ離れても歌は届き
クラッシックギター、フォークギターとそれぞれの
音色が全体をつつみこむように響きわたる。
庭にいる虫の声も聞こえてきて
合唱しているようだった。

3部に別れた構成はひとつひとつの光を放ち
まわりをほんのりと照らしてくれる。
照明がわりの古い電気スタンドも
「私の光はなくてもいいわ‥」と点いては消える。
いつも隣にいて聞き慣れた歌声なのに
まるで別人のよう‥
新鮮で優しく、秘めた強さを感じながら目を閉じる。
曲ごとに誰のものでもない自分だけの思いが
駆けめぐり、心が解き放たれていくのがわかる。
ここに足を運んでくれた人それぞれが
どのようなイメージを描いているのか
尋ねてみたい衝動にかられるがその人だけの世界に
誰も踏み込むことはできない。

「ブエナビスタ・ソシアルクラブ」という映画が好きで(ヴィム・ベンダース監督、ライ・クーダープロデュースのドキュメントムヴィー)
このところ何度か見ている。
そこに72才(98年当時)の
イブラヒム・フェレールという
キューバの天才的なシンガーが登場する。
いくつか好きなシーンがあるなかの
ひとつを紹介したい。

彼がインタビューの中で自分の生い立ちを話しながら
歌い出すシーンがある。
幼い頃に母親を亡くし父親も亡くなり
厳しい状況で生きてきたことを
話しながら歌いはじめる。
話すことと歌うことに境目がなく
流れるように歌いまた話に戻るのだが、
恒平氏の歌を聴いていてそのことを思い出した。
語るように歌ってくれた歌はまさに「言葉」だった。
今回のライブはその「ことば」が
更に深く広がったように思う。
そしてその先にはその場に居合わせた
聞き手だけが持てる想像の世界が待っていたのだ。


100分の1

今年のこの暑さは何?
暑いのをとおりこして「なつい」!?
さすがの私も外に出るのが億劫になる。
8月も入った猛暑の日、山にいけなくて残念
なんて思いながら仕事ではしかたなく‥
それでも時間がとれたのでひさしぶりに
本当にひさしぶりに実家のお墓参りに
いくことにした。

当日は朝からカンカン照りの「なつい」日で
羽田まで荷物引きずって行くのは
たどりついたらバタンてな事になりかねないと
弱音を吐いていたら,なななんと
息子が送っていってもいいよと‥。
あんなに小さくて可愛くて(オヤバカ)
優しかった息子は時間が経つにつれオトナになり
かわす言葉もふたことみこと‥
こっちは話したいことやまほどあるから
隙をみては彼の好きな食べ物を目の前にぶらさげ
「あのさ〜今日ね‥」なんて話してはみるけど
「ふ〜ん」とか「いいんじゃないの」で
あっけなく終わる。
そんな息子が送ってくれるというので
小さくガッツポーズ!

なんだかドライブ気分。
羽田まで約40分、普段話せないことや
聞きたかったことをたたみかけるように
一気にまくし立てた、ら、
思いがけない反応が返ってきた。

「まる六」や「猫・文銭」のこと
音楽について思うこと
出逢った人たちのこと
そして今の私が感じていることを伝えたら
彼は自分の考えていることについて
話しだした,ぼそぼそと。
ドキドキしながら聞いていた。
22才の息子はやりたいことがあるらしく
そこに向かって歩き出しているようだ。
小さい頃から学校での出来事をあまり話す
タイプではなくそれは今も同じ。
ときおり話し出すとそれは悔しい思いを
した時だったりした。
ある種同じような状態なのだろうか。
100分の1くらいの吐露かもしれないが
少し心の内を知ることができたような気がし
エールを送った。

別れる時も私が見えなくなるまで見届けてくれた。
車から出てすっくと立ち
照れくさそうに手を振ってくれた姿を
忘れることはないだろう。

短い時間だったけど大切な時を
息子と分け合った気がし嬉しかった。
これもお墓参りに行くと決めた私への
ご褒美だったのかもと
心の中で思いっきりガッツポーズ。