ともだち

日本列島、冬の嵐の日
約1年ぶりに大阪を訪れた。
前夜から支度をはじめ、と言っても一泊。
荷物は少なく身軽で行こう。

中学1年生4月、桜は咲いていたのかしら。
入学式の日、縁側に座った私はおさげ髪
父が庭さきから撮った写真が古いアルバムに残っている。
大きめのセーラー服は、心の成長とアンバランス。
真新しい手提げカバンや、おろしたての運動靴も所在ない。
小学生の幼さの残る私達は同じクラスで共に
中学生活をスタートした。
たった1年間、同じクラスだった。
あれから40年‥長い時間が流れているのに驚いてしまう。
親にも話せないことをたくさん話し合ってきた
ヒソヒソ ゲラゲラ
世界中の誰よりも互いのことを知っている、と思っている。
私達は友人として濃密な時間を過ごしてきた。
長い間連絡を取り合わないないこともあった。
仕事をしながら子供を育て、妻、嫁とこなしてきた彼女は電話をする余裕もなかったろうと思い返す。
時間が二人を隔てても声を聞くと一瞬のうちに
あの頃に戻れることが嬉しかった。
「もしもし、元気?」
会えなくても繋がっていることを耳から身体を通して
感じたかったのかもしれない。

絵が好きだった少女は大阪でギャラリーを営むようになった。
京都在住の陶芸家に嫁ぎ 男の子が一人、立派に成人した。
姑を見送り、夫を去年亡くした。
新年1月7日南船場から福島区へ「移転開廊披露パーティー」に参加した。
1929年に建てられた「メリヤス会館」繊維の街大阪の当時の繁栄を思い興させる建物の1階にそれはある。
古い建物と展示してある現代美術作家の作品との
ギャップが面白い。
越して間もないのにすでに彼女が明らかに存在し
晴れやかな場にゆったりとした空気が流れていた。
これこれ、このリズムにどれ程私は救われただろう。
大勢の来客を見て、ぶれずに生きて来た彼女の生き方を思わずにはいられない。
挨拶に動き回る友人の後ろ姿を追いかけながら
私は幸福感に満ちていた。
その夜は彼女の自宅に泊めてもらい炬燵に足を入れ
夜中まで話しの尽きることはなかった。

新幹線の車中で活躍する筈のiPodを忘れ品川駅で買った雑誌に「脳を鍛える練習帳」という特集に惹かれ試していた。
次のページをめくろうとし顔を上げ
ふと窓から外を見ると「虹」が目に入った。
広々としたベージュ色の田圃の真ん中に
大きく半円を描いていた。
その日は3連休の真ん中で新幹線も満席、隣には若い男性がボールペン片手に本を読んでいた。
「あ、虹‥」と思わず声を上げてしまったが
気付いた様子もなく、いや、知らない振りをしてくれたのか窓側に座っていた私は消え入るまで
虹を見続けた。何人の人が気付いただろう。
皆に見てもらいたい衝動に駆られたが余計なお世話か‥と ひとり楽しんだ。
去年は穂高でまん丸な虹を、今年はお正月に虹を‥
友人のギャラリー移転という人生の新しい船出に
ふさわしい晴れやかな気分で大阪に向かった。

思えば六文銭も1年、友人とも1年。
1年という時間は私にとってキーワードかもしれない。

LADS GALLERY(ラッズギャラリー)
〒559-0003
大阪市福島区福島3−1−39メリヤス会館1F
TEL:06-6453-5706