振り袖

晩秋の北海道ツアー5日間のライブを無事終えた。
腰痛を抱えたままのスタートだったが
大事に至らなかったのはラッキー。
3月「まる六怒濤の6日間ツアー」の経験をしていたせいか
余力があったのには驚きだった。
猫のメンバーも「もう一日行けるぞ」と還暦の二人が言う。
これが人間力というものなのか、次への力となる気がする。

帰って一息つきメールのチェックをしたら
姉からの便りがあった。
四角家の長女で年の離れた姉。
物心ついた時にはもう東京の大学に居たので
日常の係わりというよりも
夏休みやお正月に帰って来た時のことが鮮明に残っている。
久しぶりの帰郷、側に寄ると香水の良い香りがし
当時東京で流行っていたと思われる洋服に身を包み綺麗なパールの
マニキュアをし、末っ子の私には憧れの存在だった。
何より「東京」のおみやげが嬉しくてどれも大事なお宝だった。
たれ耳の黒い犬のぬいぐるみはミミちゃんと名前を付けた。
その子は何故か鼻に蜂がくっついていて長く生活を共にした。
薄いブルーと白の毛糸の手袋。
ピンクと白のギンガムチェックのカバーの付いた夏用の手提げ籠。
バレエのお稽古に持って行った。
まだ見ぬ大都会「東京」の匂いがたまらなく刺激的で
東京へのあこがれを抱きはじめたのはその頃だった。

その姉から娘の娘、つまり「孫」の成人式を迎えるにあたり
振り袖を貸してという内容だった。
その一言でスイッチが入り 奥にしまってあった
着物一式を取り出し 広げてみることにした。
振り袖、長襦袢、帯、半襟、帯揚げ、帯締め。
伊達締めは母が使っていたものだ。
どれも懐かしくきらきら輝いて見えた。
確か中学生の頃に作ってもらった中振り袖の着物。
ついでに虫干しをしながら眺めていたらいろいろなことが蘇った。
その着物を着て兄の結婚式で日本舞踊を踊ったこと。
大晦日に髪を結ってもらい お正月は
親戚の家にお年玉目当てでご挨拶に行ったこと。
袖をふりふりスキップしながら帰ったっけ。
娘が13才の時息子が七五三のお祝いで
その晴れ着を着て家族で撮った記念写真。
着物は一代で終わらず手入れさえしていれば
何十年と生き続ける貴重な日本の文化だなと普段忘れていることを
思い出させてくれた。

そんな着物を姪の娘が着てくれるなんて。
こんな嬉しいことはない。
姪も成人式の時に着てくれたっけ。
ということは四代目だ!

思いを込めて作ってくれた両親
特に母がきっと喜んでくれていると思うと
なんだか嬉しくて・・。
窓を開け放し風を通すと絹のいい匂いが鼻先をかすめる。
母の匂いだ。

私も母だけどあんな風に大きな愛子供達をで包んでやれてただろうか。
いつも目の前のことで精一杯で思いがあってもしてやれなかったことが
たくさんある。
ごめんね。

かなこへ
そんな晴れ着を着て迎える成人式。
どうか良い日でありますように。
そして 楽しいことがたくさんありますように。
素敵な大人になってね。

ケイたんより。